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失語症の私が恋をした。 [恋したくなる話]


私は失語症。
そんな私が恋をした話です。

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私 20歳 
156㎝ 顔は普通

彼 26歳
180㎝ イケメン

私は生れた時は、言葉を話す事はできました。

正直、幼い頃の記憶はありません。
言葉を失った理由を思い出せません。
ただ、それが同級生の男の子達によるもので、
ストレスせいで有る事は伝え聞きですが、解って居ます。

言葉を失って、私は中学生の大半を家で過ごす事になりました。
母は何故か出ていってしまい、私の家には父と弟、犬だけになってしまった。

私は何をされたか覚えて居なかったに、引き籠り生活を送ってた。
ただ母が居ない事は少し寂しくて、泣いてた気がします。

父と弟が話している時に、
簡単な言葉で伝えようとしても、
会話を止めてしまう事がすごく苦痛だった。

一応担任や親の好意で高校へは上がれた。
でも割と高校は地獄でした。
クラスメートは良い子達なんだけど、
教師が、私が答えられないの知ってて指名したりしてきたり
「ああ、貴方は答えられないのよね」って言われたり。

私自身、自分の記憶がない以上自分のせいな気がして我慢してた。
今思えば、辞めさせるくらいの抗議をしてもよかったのかなと思う。

ある日、学校から帰宅しようとした時に携帯が鳴った。
母だった。

母はたまに電話をくれて私が声を出せないのを知って居るから
「はい」か「いいえ」で答えられる様な質問をくれた。

私はいつも拍手とかで答えてた。
でもその日は違って
「アンタが喋れなくなったから!!」と罵られた。
何も答えられないから母の話をただ聞くだけだった。

その時、どんどん胸が苦しくなってきて息が荒くなってくるのが解った。
呼吸出来ないのに、人は沢山いるのに、誰も私に気付いてくれない。
声が出ない事がすごく怖くなっ。
、このまま死ぬんじゃないのかなって…。
言ってしまえば過呼吸に陥ってしまったわけです。

そんな時、背後から肩を叩かれて声を掛けられた。
「大丈夫?」
そんな普通の言葉が嬉しくて、安心した。
正直顔なんか殆ど覚えてない。
でも何も言えない私を駅の事務室までおぶって行ってくれた。

それが彼との出会いでした。

そして、これ以来母からの電話はなくなった。

事務室で紙袋を貰って、本当は私が聞くべきなのは解って居るのですが
彼にお礼がしたいので、電話かけてほしいと言う旨を書いたメモを渡しました。
でも、落ち着いた後、もう彼は居ませんでした。

この時は好き、とかもなくて、助けてくれたお兄さん、だった。
今思えば、連絡先渡すとか何さまなんだろうと思います。

それから数日して、携帯の電話が鳴った。
知らない番号だったし、弟も居なかったので、出る事は出来なかった。
でも留守電に彼から
「あれから、どうしてるかな、って思って。別にお礼とかは良いので元気かだけ教えて下さい」
とメッセージが入って居た。
私はすごくうれしくて、思わず電話を折り返してしまった。

どう説明したら通じるか、だとかは考えてなくて、ただ彼にお礼を言いたかった。

3コールで彼が出た。
大人ぽいというか落ち着いた声の人だなって思った。
私は無言で、彼はずっと「もしもし?」と不安そうに聞いて居た。
どうにかお礼だけでも言いたくて、何度も口を開いた。
多分相手には唇の当たる音が聞こえてたんだと思う。

「もしかして喋れない?」

彼がそう聞いてきた。

でも「うん。」とは言えずにマイクを1回だけ叩いた。

「あーごめん。なんかそうかなーって思ったんだ。」
「気付かなくてごめん、今元気?」

私は1回マイクを叩いた。
一言も伝えていないのに
喋れない事を理解してくれる事が嬉しくて泣いてしまった。

声が出ないので嗚咽すら届かない。
だから思い切り泣いた。

「そっか、でも、またあんな風になったら音出して周りに伝えなきゃだめだよ」

優しい声で叱ってくれた。

正直父は良い人だけど、腫れ物を扱う様にされてたから
こうやって、純粋に怒ってくれるのが凄く、凄くうれしかった。

「泣いてるの?」

私はマイクを二回叩いた。
私の泣き声は同室に居ても聞こえない。

「嘘でしょwごめんね怒ったりして」
「高校生?若いなー、あの制服だと××かな?」

どうして喋らなくても解るのかな、って純粋に思った。
私はマイクを叩くだけだった。
でも彼はどんどん話して行く。
久しぶりに人と話すのって楽しいなって思った。

最後彼は
「また何か有ったら電話して、これも何かの縁だし」
そう言った。私は1回だけマイクを叩いた。
泣いてない事に続いて二回目のウソでした。

彼と出会って各段に何か、私に対する偏見の目が変わる訳ではありません。
辛い事がある度に、彼の電話番号を見ては、通話ボタンを押そうとするのですが
おせませんでした。
きっと彼の言葉を社交辞令だったらどうしようか、
そう思っては携帯を閉じました。

でも私は、彼の番号があるだけで、それでも真っ直ぐ生きていこうそう思えました。
もうこの時、私は彼が好きだったんです。
単純な女です、ちょっと優しくされたから惚れた、それだけですw





高校を卒業し、引き籠り等の支援教室の事務に就職しました。
大学へ行く事も考えましたが、主治医が薦めてくれるままに、働き始めました。

気持ちが悪い話ですが、その時の私の携帯の発信履歴は彼の名前が
ひとつ、あるだけでした。

働き始めたところは、幸いにも偏見の無い優しい方達ばかりで
話せない事を覗けば、すごく働きやすい職場でした。

働き始め、初めての冬。
私は高校時代の友人と食事を済まし、帰宅しようと駅に急いでいました。

ですが不意に、目の前に男性が転がってきました。
私の地域には珍しく雪が降って、シャーベット状に溶けだしていた。
思うにその男性は階段を上ろうとして、こけたのだろう。そう思いました。

立たせて直ぐに帰れば、喋らないで済むだろう。
そう考え彼に手を差し出しました。


「ありがとう」

酒臭い息と共に、優しい声が聞こえました。
一瞬で顔が火照ったのが解った。
男性が顔を上げて、その男性が本当に彼だと気付いた時
逃げ出したくなった。というか逃げた。

マフラーで顔隠して階段を上ろうとした。
そしてこけた。

痛くても声が出せない。無言の私。
今度は笑いながら私に手を差し出した。
やっぱり酒臭い。そして恥ずかしい
そう思いなが手をとって立った。

「お互い転んじゃったねー」
彼は笑った。
私は顔を上げられずただ頷いた。

「あれ、あの時の子、だよね?」
私は首を横に振った。

…三回目のウソ。

「ほら、またウソ付いたー、電話してくるって言ったのに電話してこなかったじゃん」

彼はへらへらと笑った。
上機嫌な様子だった。

「よし、お兄さんとメールアドレスを交換しよう」

そう彼は鞄から、ペットボトルを取り出した。
そして何も言わずしまい、携帯を取り出した。

私は首を振って断ろうとしたけど、最終的に酔っ払いには勝てずに交換した。

「これで、話ししやすいでしょ」

彼のその言葉を最後に別れた。
ずっと胸がドキドキしてた、もしあの時喋れたなら

「好き」だと言えたかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから、彼とメールする様になって彼には付き合ってる女の人が居るのも知った。
告白しなくて良かったーって思った同時に泣いた。
でも今度は彼も気付いてくれなかった。

好きだなって思ったけど。今度は全然伝わらなかった。
それで、彼が優しくて人に気を使う人だから私の些細な変化にも気付けるんだって解った。

何度か彼に会ったり食事にも言った。
別に特別な関係にはならなかったし、多分兄弟か何かに見えてたと思う。

でも有る時、彼の言う彼女って言うのが、高校時代に亡くなった人だって言うのを聞いてしまった。
彼は彼女と別れて居ないし、他の人は好きになれそうになれないんだ。と打ち明けられた。

恋愛に夢見て居た私は、そんなに辛いものなのだろうか?
そんな風に思ったけど、一緒に泣いた。泣いて泣いて凄く辛くなった。

抱きしめる勇気もなかったし、優しい言葉すら掛けれない自分がもどかしかった。

それから、私達の関係は変わってしまった。
彼女の事も禁句で、会う事も無くなってしまいました。

きっと彼は私に女の子としての優しさを求めて居たんだと気付いた。
言葉がかけられなくても抱きしめたら良かったって後悔した。
同時に、貪欲な自分にも気付いてしまった、彼女はもう死んでいるのだから
付き合えなくても、彼と居られるのかもしれないって。思った。

そんな自分が嫌で彼と会えなくなった。
毎日の楽しみだった彼とのメールが苦痛になった。
メールが来るとうれしいのに、彼女の事、あの夜の事思い出して苦しくなった。

そんな事で私と彼は疎遠に。

そして去年の10月、また駅だったんだけど、改札を通ろうとしたら
切符がなくてあたふたしているところ、後ろから声を掛けられた。

「ほら切符落ちてるぞw」

いつもの優しい声だった、でも私が振り返って切符を拾ったら
じゃあなwとか言って、人混みの方に行ってしまった。

会えたって思ったと同時に、もう多分会えないんじゃないかって思って追いかけた。
でも私が人を追いかけるって結構面倒臭いんだ、声は届かないし。
体力や運動神経もないから。

だけど、兎に角口を開いて相手の名前を呼んだ。
聞こえなくてもいいやって思った。
もしかしたら言葉が出るかもしれないしって思った。

でも気付いたのは知らないおっさんだった…。
人生って上手く行かないなぁと思いながらホームで泣いてしまった。

そんな時…

「トゥルルルル・・・」

私の携帯が鳴った。

喋れないのも忘れて、誰の着信かも見ずに出た。

「もしや追いかけてきた?」

彼だった。

辺りを見渡したけど彼は居なくて二回マイクを叩いた。

「うそ。だって声したしww」

声なんかする訳ないだろ、からかうなって思ったら
涙が余計溢れてきて、鞄を殴った。

「ごめん。」

そう一言だけ言った、切ろうとしてるのが解った。

私は切られたくない一心で、携帯のマイクを叩いた。
本当に消えちゃうって思ったんだ。
もちろん私の思いすごしだったんだけど。

「じゃあまたな」
「なんだよw後でメールで聞いてやるってw」
「じゃあなw」
って彼はただ切ろうとする。

止める術が他に思い付かなくて、大きい声だそうとして口を開きながら
「すき」って何回も言った。

音にはならなかったと思う。


でも・・・
彼は答えてくれた。

「俺も。」

えっ!?って戸惑うと同時に一気に涙がやんだ。

「今まだ駅?」
携帯を叩いた。

その後1時間程で彼が来た。

もう1度、確認したくて口を動かした。

(すき)


すると彼が
「俺も」って答える。

「俺も好きです、付き合って下さい」


私は涙が出るほど嬉しかった。


彼は元彼女の事は忘れるつもりもないらしいけど
でも、別にそれは人をすきになっちゃいけない訳じゃないと考えていたようです。


彼と付き合っても言葉はまだはなせません。

なんか運命的なものかなと夢見て居た私ですが、
息使いで彼に好意を伝えられるだけで満足です。

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